13.6. 統合説 : ダーウィニズムと遺伝学の出会い
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自然選択はダーウィンが説明することができなかった遺伝的プロセスを必要とする
メンデルの発見は、彼の生存時には、科学界によって正当な評価がされなかった
メンデルの遺伝学説とダーウィンの説は、両者の死後数十年を経た1900年中頃に一体となった
統合説 modern synthesis(現代的総合, 総合説)
鍵となる要素のうちの一つは、集団生物学の重要性
進化ユニットとしての集団
進化の影響は集団の時間に伴う変化で明らかになるだけ
ある集団は同種の他集団から隔離され、集団間での交雑がほとんどなく、遺伝子の交流がほとんどないかもしれない
そのような隔離は、遠く離れた島や川で接続されていない湖、あるいは、低地によって分断された山脈では普通に見られる
しかし、集団は通常それほど隔離されておらず、明確な分布境界はめったに持たない
重なった地域では両集団のメンバーは共存するが、その数はそれほど多くないであろう
個体は集団の中心部により集中して、同じ集団の個体間で繁殖しやすい
したがって、集団の生物は、通常、他の集団のメンバーと比べて、たがいにより密接な関連がある
集団は、最も小さな進化可能な生物学的単位
集団レベルで進化を研究する際に、生物学者は遺伝子プールに着目する
遺伝子プール gene pool
あるときに集団を構成している個体の中のすべての対立遺伝子の集合
集団の対立遺伝子の相対頻度がいくつかの世代を経て代わるとき、最も小さなスケールで進化が生じている
集団内の遺伝的変異
個体変異はすべての種において存在する
外見の違いに加えて、多くの集団では、分子レベルの大きな変異がある
生化学的分析はそのような変異を明らかにすることができる
集団におけるすべての変異が遺伝するというわけではない
表現型は、遺伝する遺伝子型と多くの環境影響の組み合わせから生じる
変異の中の遺伝子による構成要素だけが自然選択に関係する
集団中の変異する特徴の多くは、いくつかの遺伝子の複合的影響から生じる
この多遺伝子性の遺伝は、たとえば人の背丈のような、連続的に変化する特徴を生じる
対照的に、血液型のような特徴は、異なる対立遺伝子をもつ1つの遺伝子座で決定される
このような場合は中間型がない
遺伝的変異の源
突然変異
DNA塩基配列のランダムな変化
新しい対立遺伝子を作り出すことができる
たとえば、突然変異により遺伝子中の1塩基が他の塩基に置き換わることがある
そのような変化がタンパク質の機能に影響を及ぼすならば、この突然変異はおそらく有害になるだろう
ランダムな突然変異は闇夜で銃を打つようなものである
突然変異によるゲノムの改善は、自動車のボンネットに弾丸を撃ち込んでエンジン性能が向上する可能性よりも低い
しかし、まれに変異対立遺伝子は、実際に繁殖成功を高めることがある
このような効果は、かつての環境で不利だった対立遺伝子が新しい環境下で有利になるというように、環境が変化しているときにより影響は起こりやすい
配偶子によって伝搬される新しい突然変異は、ある対立遺伝子を別のものに置き換えることによって、集団の遺伝子プールをただちに変化させることができる
1個体は何千もの遺伝子を持っていて、集団中には何千あるいは何百万もの個体が存在するため、ゲノム全体の突然変異の累積的な影響は重要
たとえば、バクテリアのように非常に短い世代時間を持つ生物は、突然変異のみを遺伝的変異の源としてもとても速く進化することができる
しかし、大部分の動植物では、長い世代時間のため、短期間には新しい突然変異が全体的な遺伝的変異に重要な影響を与えることができない
したがって、有性生殖時の集団の大部分の遺伝的変異は、各々の個体が受け継ぐ対立遺伝子の独自の組み合わせから生じる
既存の対立遺伝子の新しい組み合わせは、覚醒台において有性生殖の3つのランダムな構成要素により起こる
減数分裂中期Iにおける相同染色体の独立した配向、ランダムな受精と組換え
突然変異と有性生殖過程はランダムであるが、自然選択はそうではない
環境は、生存と繁殖成功を強化するような遺伝子の組み合わせの普及を選択的に促進する
遺伝子プールの分析
2種類の花色変異のある野生植物集団を考える
赤花の対立遺伝子(R)と白花の対立遺伝子(r)
この仮想植物集団では、花色決定に関係する遺伝子プールは、わずか2つの対立遺伝子からなる
すべての花色遺伝子座の遺伝子プールで80%がRを持っているとする
集団中でR対立遺伝子の相対頻度を$ p、rを$ qとする
すなわち、$ p=0.8, q=0.2
以下のように頻度を表すことができる
$ p + q = 1
遺伝子プールが完全に安定である(進化しない)ならば、対立遺伝子の頻度から集団中の異なる遺伝子型の頻度を計算することもできる
配偶子プールから2つのR対立遺伝子を取り出してRR個体ができる可能性は$ p^2 = 0.64
植物集団の64%はRR個体遺伝子型を持つ
同様にrr個体は$ q^2 = 0.04
異型接合の個体の頻度計算には慎重を要する
異型接合の遺伝子型が、精子か卵のどちらかが優勢対立遺伝子を供給するかにより、2つの方法によりできる
$ 2pq = 0.32
対立遺伝子の頻度から遺伝子プールで遺伝子型の頻度、あるいはその逆を計算するための一般的公式を導くことができる
$ p^2 + 2pq + q^2 = 1
1908年にこの式を導き出した2人の科学者の名をとってハーディ・ワインベルグの法則(ハーディ・ワインベルクの法則)と呼ばれる
集団遺伝学と健康科学
公衆衛生科学者は、集団中の特定の遺伝性疾患の対立遺伝子を持つ人間の頻度の計算に、ハーディ・ワインベルグの法則を使う
フェニルケトン尿症(PKU)の例
アミノ酸のフェニルアラニンを分解することができない遺伝病
この病気は無処置のままなら、その障害により高度の精神遅滞が起きる
PKUは米国で生まれる1万人の赤ちゃんのうちの1人の割合で生じる
現在、新生児は通常PKUの検査を受ける
病気を抱えている個人は、厳しい食事制限を続けることにより、発症を防ぐことができる
PKUは劣性対立遺伝子に起因する
表現型を生じるためには2コピーが必要
$ q^2 = 0.0001
$ q = 0.01
$ p = 1-q = 0.99
PKU対立遺伝子を1コピー持ち、子どもに渡すかもしれない異型接合の個人であるキャリアーの頻度
$ 2pq = 0.0198
ハーディ・ワインベルグの法則により、米国集団のおよそ2%がPKU対立遺伝子のキャリアーであることがわかる
有害な対立遺伝子の頻度を推定することは、遺伝病を対処しているどんな公衆衛生計画にとっても不可欠
遺伝子プールの変化としての小進化
進化は時間に伴う集団の遺伝子構成の変化として測ることができる
このことと比較することにより、集団が進化していないならば、何が予想されるかを考えるのに助けになる
ハーディ・ワインベルグ平衡 Hardy-Weinberg equilibrium(ハーディ・ワインベルク平衡)
進化していない集団は遺伝的平衡にある
その差異、集団の遺伝子プールは一定のまま
世代ごとの対立遺伝子($ p, q)と遺伝子型($ p^2, 2pq, q^2)の頻度は不変
有性生殖により遺伝子の組み合わせを変えることは、大きな遺伝子プールを変化させることはできない
統合説の成果のうちの1つは、集団遺伝学に基づく進化の定義
進化は、集団中の対立遺伝子頻度の世代間の変化
小進化 microevolution
最も小さなスケールで見られる進化であるため、こう呼ばれる
→13.7. 進化の仕組み